瞬き続けるオレンジの燈

この町にはじめて来たとき

ポニーテールにオーバーオール

お気に入りのショートブーツをはいて

友達に誘われるまま

今は無きディスコのドアをくぐった

サイケデリックな壁画

ドンドンと五臓を打つリズム

照明が全ての白を蛍光に浮き上がらせ

誰もが飛び抜けた歯と白目をしていた


病気のようにディスコに通い

朝まで踊った

体にはりつくドレスにハイヒール

夜の化粧と媚態

身も心も綿菓子のように軽く

望むともなく音と酔いが

面倒くさいものを片っ端からはじいてくれた

過去も未来も遠くの恋人も

目に見えない触れられないものはあまねく

”無い”のだった

最高の居場所だった

少なくとも

歳の重みが雲の足場を心もとなく思うまでは


いったんは棄てたこの町に

巡り合わせで流されて舞い戻ったとき

かつてのディスコは廃屋と化し

壊される日をじっと待っていた

新しく建ったクラブが気まぐれなブームと共に消えた後も

二度三度と姿を変えたが

いつの時もドアは夜にだけ開かれた

私は化粧を落とし

ハイヒールを脱ぎ

マニュキュアを落とした爪を歯でちぎり

はじめての頼りを疑いながらも

幸福に少し太り

柔らかくほぐれていく自分にとまどいつつ

裏道を野良猫みたいに往復した

繰り返される季節をひき連れて

たぶん誰のためでもない表情を浮かべて


再びこの町を去ろうとしている

去らねばならない

どうすることもかなわず、仕方なく

また居場所を失う現実に、毎日不思議なほど眠い

闇の心に耐えきれず酒を飲んで毛布にくるまる

何度も見下ろした8階の踊り場からの光景がふいに脳裏に現れる

ゴミ置き場のコンクリートに横たわるつぶれた自分の死骸

くっきりと満月が浮いていた早春

蒸し暑い真夏の夜更け

舞い降りる雪が地面に溶けてなくなるまで追った朝

すごいほどにこの世は美しく

なぜか私は納得して大人しく部屋に戻った


もう踊り場へは行かない

叫んでジャンプしそうな夜は

町のネオンも私を救えない

生きるのが怖い

ひとりが怖い

遠くに幻のあかりが見えない

板のように床に張り付いて祈る思いで睡魔を待つ

もうお終いにして

これきり目覚めさせないで

どうか どうか

定まりなく視界は空を飛び

ひたすら私は哀願する

物言えぬ犬の目のように


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