ランプの灯が昔ガラスにけぶって

路地往く人を呼び止めなければ

長い年月煮込んだような木の家は

闇に沈んで見過ごされてしまったろう


屋根裏のような二階席

角がすり減った垢光る柱

意図のない吹き抜け

今にも落ちそうな床は複雑に仕切られて

短い階段を上がったり下がったり

歩くたびに歯ぎしりみたいな音がする


店内は年中夕暮れ

壁の古時計も、もちろん止まっている

傾いたソファーに背もたれて

傾いた油絵に囲まれて

クラシックにつかり

時間を失う

オレンジエード

薄いコオヒイ

角砂糖

若く健康な友を前に

今日の私はおしゃべりだ

旧き良き昭和の

のすたるじーに吸い込まれ

話さなくてもいいことまで話している

秘密などつまらないと磁場が言うのか


唐突に一つ鐘が鳴る

さあ、トリップは終わりだよ

さっさと現実にお帰り

あたふたと立ち上がり

そそくさと店をでる

街のにおい、車の音

眠りについたアーケード

夢の余韻ものこらない


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