執着する名が無かったこと

頼みにする容姿を与えられなかったこと

安住する豊かな心を持ち得なかったこと

人々が美徳とする天性と無縁だったこと

悲観することはない

それら全てが幸いなのだ

何かを見つけなければ危うい者は

誰よりも早く探索を始めるだろう

必要に迫られて

存在をかけた泣きっ面で

誰よりも先に伏線を手に入れるだろう

先んじて未知の世界に歩きだせる

旅するごとに

持たない故に及ばなく感じていた

かつての世界は輝きを失い

色あせた積み木の山に見えてくるだろう

年月や時代の変化にさえ

容易に崩れてしまうもろい幻

廃屋の中庭で一人過去を護り通しても

そこにあるのは湿った土くれだけだ

持たない者よ

怠らず忠実に生き様を遺せ

そうすれば旅が終わりを告げ

醜く老いて逝ったあとも

何十年何百年

なおも今に生き続けることができる

もし間違っていなければ

それが続いていく道ならば

いつか誰かが探し出し

後を継いでくれるだろう

先へ

たどり着きたかったそこへ

もっと核心へ

時間を超えて輝いたまま

行くことができるだろう

           

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